パタゴニアとタンポポ、あるいは長崎の女

「我々の乗り組むリエンテール号があった。一九四五年建造の六八〇トン。チリ海軍の軍艦の中ではもっとも小さい沿岸警備艇クラスのオンボロの軍艦である。艦名の「リエンテール号」というのはこのパタゴニアに昔いたインディオの酋長の名前だという。」p42
 上記の文は椎名誠著『パタゴニア』にあるリエンテール号についての説明部分だ。24日放送FM沖縄『椎名誠のじゅねーラジオ』で椎名がリエンテール号に乗ったことを話していたので、『パタゴニア』を再読した。
 この本は椎名の著作の中で隠れた(別に隠れてないけど)名作だとスルドク断言する。この本で描かれるパタゴニアへの旅の目的はテレビのドキュメンタリー番組『大氷河二〇〇〇キロ地球最後の神秘に挑む・パタゴニア』の撮影だ。本の構成としてはリエンテール号乗船体験、陸に上がり羊飼い体験などを書いているのだが、そのパタゴニアに旅立つ前の日本で、「妻の様子がおかしい(中略)話をほとんどしないのだ。」p09と、椎名は妻の様子が精神的に変であることに気づく。そんな不安を胸に秘めてパタゴニアに旅立つわけだが、「雲が覆い、この地方特有の強い風が吹くと、海は灰色に沈黙し、なにか気持ちの底のほうが奇妙にざわついた。」p40とパタゴニアのとんでもなく荒れた天候と、日本に残してきた妻への心配とが交互に現れて、実に読者に私小説を読ませるような精神的に深いエッセイになっている。著者が意図してこのような構成を取っているのか、偶然なのかわからないが、ドキュメンタリーのエッセイのはずが、男女間の精神的機微も同時に描くという綱渡り的難しいことを成功させている。あとがきには「ぼくは旅の間中、帰ったら妻はもう生きてはいないのではないか、という恐れにおびえてきた。」とある。あとがきに感動するという本もなかなかない。
パタゴニア―あるいは風とタンポポの物語り (集英社文庫)
(Copyright©グブリー川平)

タグ : 椎名誠

こっちの世界からあっちの世界へ

 *無断で当ブログの写真や文章を複製・転載・等することを禁止します。佐藤信正著『ブラウザのしくみ』(技術評論社)読了。うーむ、世の中は知らんことばかりだなあ。ブログを始めてアクセス解析とかに興味を持ち始めたスキルの人にお勧めの本だ。検索エンジンのアドレス欄に現れるA%B%C%D%E%F%というのはなに、個人情報入力欄に半角カタカナ入力禁止なのはなじぇ、httpdはソフトの名前、UAとは、ブラウザの歴史、英語のWeb logのウェの発音が消えてブログになった、アフィリエイト報酬を横取りするスチールウェア、などなど、えーな内容でごしごし読んだ。「セキュリティとプライバシー」の章はブログ閲覧者も大切な項目だし、「パソコンという「こっち」の世界から、Webサーバという「あっち」の世界に移行します」p242という「ブラウザの未来」もブロ小(ぐわぁ)ことグブリー川平には面白かった。本の裏にM-codeという番号がついていた。新しい識別記号なのだろうか。
佐藤信正著『ブラウザのしくみ』←Amazon
(Copyright©グブリー川平)

本『爆笑問題集』

*無断で当ブログの写真や文章を複製・転載・等することを禁止します。テレビブロス特別編集『爆笑問題集 (TOKYO NEWS MOOK)』(東京ニュース通信社)を読む。本の厚さが約33ミリあり、ボリュームを感じさせる。ブックカバー裏に阿佐ヶ谷駅周辺の地図が載っておりタイタン関係者行きつけの店が紹介されている。小口は記事の年度ごとに色付けされている。なかなか本として凝ったつくりだ。帯に「爆笑問題デビュー20周年記念本!」とあり、爆笑問題ももうおじさんだね、と思う。本の背表紙に爆笑問題の顔を入れ替えたアイコラ手法の写真が掲載されていて、太田光の顔+田中裕二の胴体が坂本龍一に似ている。これは顔数式の新しいバージョンではないか。
 本の内容は。テレビ情報誌『TV Bros.』に掲載されていた太田の文章と、田中の紙粘土で作った彫像の写真でひとつの記事を形成している。掲載内容の詳細は「『TV Bros.』1995年9月30日号〜2006年10月22日号の連載『天下御免の向こう見ず』と、その期間に掲載された『爆笑問題の特集記事』、1995年1月14日号〜1995年9月16日号の連載『爆笑タイタン』に、加筆・修正をしたものです」とある。小生、『TV Bros.』を一度も読んだことがない。であるからして、雑誌掲載時の面白さとか完成度は知らない。あくまでも本だけの読後感を書く。
 まず、太田の文章があまりにも読みやすいのでびっくりした。テレビで見ているあの発言や態度というのを見慣れているから、文章もそうとうはちゃめちゃで文体的チャレンジとか過激に他人の感情を逆なでするなどを期待していたわけだが、まったくの肩透かしだった。読みやすく、基礎のしっかりした美文調ですらある。内容は現実の問題を正面から扱ったもの、子供のころの思い出を扱ったもの、この二つを途中から幻想小説のように虚構へ飛ばすものと、表現手段に幅がある。ただ、それが成功しているかどうか。というのも小説化することによってどうも論点や表現したいことがボケてしまっているように思える。というより、不肖・グブリー川平が読みたいのは、オブラートに包んだ過去よりも、生々しい状況だったりするからだ。後、考え方にぶれがあるのが気になった。前半では政治も政治家も信じないので投票に行かないと発言しているが、米国ツインタワー旅客機衝突事件後、米国大統領ブッシュと小泉純一郎を批判している。政治に興味がないなら、批判の意味もないのだと思うのだが、この辺の矛盾は太田の中でどうやって解決しているのだろうか。
 それに比べると田中はやはり異質だと実感した。『爆笑問題のニッポンの教養』などでよく太田が、俺が変で田中がしっかりしているみたいに見られますけどまったく逆ですから、という発言があながち嘘ではないなと思った。
 P59の粘土細工写真を見てほしい。リアルな手のひらを造っているのだが、そこにコードのようなものが延び、その先にスイッチのついたホルダーのようなものがある。キャプションに「森繁の手」としかないので想像するしかない。僕の想像したのは、人の手のひら型バイブ。つまり普通バイブは男性の怒張した魔羅を模倣するわけだが、、模倣すべきは魔羅ですらなく、人の手、つまり愛撫する手にまで模倣の想像力は発展しているのではないか?という問いを投げかけていると、この田中の粘土細工写真を見て思ったわけ。もちろん女性向のテレビショッピングでYA-MAN EMSゴールデングローブ MNA21というのが販売されていて「他の用途に使うんだろうなあ」とすぐに邪推したわけだが、それさえも超越していて、「手でいいじゃないか」という悟りが聞こえてきそうだ、田中の粘土細工には。ちょっと、持ち上げすぎたかな。
 この本は爆笑問題の歴史的資料として価値があると思う。爆笑問題ファンには家宝だろうし、同じ時代を生きてきた年代には、過去を振り返る一助となると思う。(Copyright©グブリー川平)
顔数式 太田光の顔+田中裕二の胴体=坂本龍一

タグ : 田中裕二 太田光

本『空爆されたらサヨウナラ』

 宮嶋茂樹著『空爆されたらサヨウナラ』を読む。宮嶋の本はわりと手にとる率が高い。右翼っぽい文体(多分立ち位置)が、戦場にマッチしていて読む速度を妨害しない。左翼系の平和好きです戦争反対みたいな信仰文体では、事実の斬り方が鈍くて誤読を生じる。それ以上に、最初から本を手に取ることは、もうこの年齢、読書経験からして、ない。やはり、この本でも出てくるのだが、日本が世界に誇る国営放送局NHKの実態。戦場に、NHKが出てくると「安全」のしるしらしい。椎名誠の本でもNHK大名取材ご一行さまの愛想の悪さが書いてあった。NHKって海外でどんな活動しているのだろうか。その活動の費用、受信料だよね。今年2月コソボ独立宣言があった。中東の宗教・部族対立やバルカン半島の人種対立は、極東の地で窺い知ることはなかなかできない。ま、勉強不足もあるんですけど。そこで、宮嶋本の登場。NATO軍が空爆しているころ1999年の話が書かれている。空爆されるその地面からの取材だから迫力満点なわけだが、誤爆を引き起こすP100「誤爆の理由は、パイロットの心理にある」にへーっと思った。いつの時代も、バカとはさみは使いようってことですか。

本『不肖・宮嶋 南極観測隊ニ同行ス』

 不肖・グブリー川平、この沖の縄に生を享けて二十有余年。このような爆笑体験記をいまだ読んだことがありません。今週の《週末読みたいこの一冊》はもちろん『不肖・宮嶋 南極観測隊ニ同行ス』であります。普通、公の団体、特にこの場合は南極観測隊を同行取材しているのですから観測隊の実務や観測の成果といったあたりが本の内容になるのではないか、と予想されますが、さにあらず。徹底した隊員密着型プライベート暴露明け透け報告、下ネタ頻出、恐怖、男だけ社会ありのまま報告なのであります。この本の画期的な点はフリーカメラマン宮嶋茂樹の報告を勝谷誠彦(かつや・まさひこ)が戦史データ、故事成句、軍歌集から引用した単語をちりばめリライトしている点であろう。古色蒼然とした言い回しが南極観測隊の苛酷な状況を実にうまく表現していて爆笑してしまいまするう。この本は辺境地レポートに文体がいかに大切かを示した画期的一冊であると、不肖・グブリー川平、スルドク断言するものであります。
プロフィール

グブリー川平(かびら)

Author:グブリー川平(かびら)
【座右の銘】
「考える前に跳べ」「神社仏閣から日常生活までメリット・デメリットは必ずある」「つるまず、自分の頭で考える」。
【性格】
シャイな目立ちたがり屋。
【好きな作家】
筒井康隆、椎名誠、井上靖、長岡鉄男、ナンシー関、養老孟司、野田知佑。
【最近印象に残った映画】
Rebelion。
【音楽】
芸能山城組。
【気になるテレビ出演者】
三神万里子。
*このサイトにはアフィリエイトリンクが張ってあります。
*無断で当ブログの写真や文章を複製・転載・等することを禁止します。

カテゴリ
カレンダー
07 | 2008/08 | 09
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -
月別アーカイブ
ブログランキング
下のバナーをクリックするとFC2ブログランキングに投票できます。

FC2Blog Ranking

ブログランキング
下のバナーをクリックすると人気ブログランキングに投票できます。
人気ブログランキング
ブログランキング
下のバナーをクリックするとTREviewブログランキングに投票できます。
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSフィード
アフィリエイトリンク先
アフィリエイトリンクのリンク先は下記のとおりです。
など。
チュラジオ誕生!
沖縄県北谷町のFMちゃたんが送るストリーミング配信「チュラジオ」、グブリー川平も聴いております。
上のバナーはチュラジオにリンクしています。